ハタ・ヨガ習学の後に

ハタ・ヨガを一から習う

習学の後に

この本の初めに書かれてある言葉を覚えているでしょうか。この言葉はご存知フランスの作家であるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ氏による物語『星の王子さま(小さな王子)』の中で、小さな王子が言った台詞です。さらに続けて小さな王子はつぶやきます。「そんなこと、しなくてもいいのにね……」。

1943年に出版されて以来、小さな王子の言葉はきっと、世界中の多くの人の心に響き、残っていることでしょう。中でも最も知られた言葉は、小さな王子が仲良くなったキツネに教えてもらった「秘密」ではないでしょうか。


大切なものは、目に見えない


便利、快適を求めることにかまけ、大切なものを見失ってしまうのは世の常、人の常。現代人もまた、特急列車に乗りたがるかのように、何事も手間暇かけず手早く済ませることに注意が向き、自分がいったい何を探し求めているのかはなおざりにされがちです。
そのため余裕を持つどころか、逆にせかせか動いたり、成長できずに、同じところをぐるぐる回ったり……。自己発見の始まりとは、本当に大切なものは何か? に注意を向け始めることだと言えるでしょう。

彼はまた、その著者『人間の大地』の中で、「努めなければならないのは自分を完成することだ」や、「発明の完成は付加すべき何ものも無くなったときではなく、除去すべき何ものも無くなったときに達せられる様に思われる…(中略)…発明の完成はこのように、発明の除去ぼうきゃくとその境を接するのだ」などと、人生や物事の本質を思索した内容を、述懐しています。


さて、ハタ・ヨガの修行法とは、締付と脱力により、心身の停滞質と激動質を減退させ、心身の純粋質を増進させていく心身の浄化法です。先の彼の言葉にある「発明」を「行法」に置き換えたなら、その本質が明らかになります。締付とは本来、身体に備わっている行為であり、行法の除去がその完成だと言わざるを得ません。

同じように自己発見もまた、除去すべき何ものも無くなったとき、発見される全てを除去したとき、「発見すべき何者もいなかった、自己とは本来、永遠に達成されている」と知るとき、その終焉かんせいを迎えることでしょう。

2019.6.2 尾山 広平


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