【印相④】三重の締付
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コウモンを収縮して上昇をなし、イダーとピンガラの両道を閉じて、生気を中央気道へ導く。
3-075
この方法によって、生気はラヤ状態に達する。そのときには老病死も起きない。
3-076
この三重の締付は、いにしえの偉大な大師たちが行じられたところの最勝の締付であって、すべてのハタ行法の完成をもたらすものであることを、ヨガ行者たちは知っている。
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神々しい姿の月から流れ出る甘露はことごとく日が飲んでしまう。そのために肉体は老衰するのである。
3-078
これについて、日の口をごまかすのに、すぐれた手段がある。しかし、これはヨガ教師の指導によってのみ会得できるもので、たとえ100万の理論をもってしても会得することはできない。
『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』
④ 三重の締付:バンダ・トラヤ
腹周辺、肛門周辺、喉周辺の三処を同時に締付ける印相である。それはハタ・ヨガの最も中核に位置する操作であろう。これまでの解説通り、それは上昇の締付に伴い自然と起こるものである。
三重の締付の意図は、全身の締付を感得することである。
1.準備体位
準備体位(立位)
準備体位(坐位)
2.締付体位
締付体位(立位)
締付体位(坐位)
3.脱力体位
脱力体位(立位)
脱力体位(坐位)
最勝の締付
教典には、古の偉大な大師たちが行じられたところの最勝の締付と説かれる程、ハタ・ヨガお心髄とも言える三重の締付であるが、解説してきた全練習の中でも、最も単純な操作による締付(伸び)である。
実のところそれは、腕の締付の中にある「腋窩の引入」である。
ウェブ上では「腕の締付」は割愛しています。また三重の締付は、腕は挙げていないものの【基礎体位⑤】拳上の締付と同じ流れです。
想像の活用
- 吸気過程(全て同時) 生気が中央気道を上昇するように、適度に徐々に上昇の締付を強めていく
- 保気過程 生気を圧縮し中央気道に導き切るように、適度に一層に締付を極めていく
- 呼気過程 生気が徐々に徐々に降下していくように、適度に徐々に締付を緩めていく
生気が入口から流出しないように、適度に徐々に根の締付が強まっていく
生気が出口から流出しないように、適度に徐々に網の締付が強まっていく
秘訣は、鼠蹊下と腋裏の降下により姿勢を調えつつ、鼠蹊窩と腋窩を締付けること。呼気に伴い腋窩の引入が起こること。
名前と幻想
三重の締付とは、伸び(全身の締付)の際に自然と起こるものであり、極所局所的に捉えたときの名前が三重の締付であり、全域的に捉えたときに名前は消え去るものである。三重の締付とは、言葉上にだけある幻想に過ぎない。
無論、全ての名前は、言葉上にだけある幻想に過ぎない。
全体一致の原理に基づき、無理のない印相を修習していきましょう。