2019-10-01

脚と骨盤の一致の原理に則した「魚の王の体位」

正しい姿勢を一から習う

前回のレッスンでは、初回のレッスン「正しい姿勢の原理原則」の中でも"脚と骨盤の一致の原理"に焦点を当ててお話をしました。今回はその原理を、一般的にも親しまれている「魚の体位(マツィエンドラ・アーサナ)」に応用していきましょう。

前回のレッスンはこちら

レッスン2

魚の王の体位

「魚の王の体位」は、ハタ・ヨガの経典『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』にも紹介されていて「背骨を捻転する体位」とされています。一般的にも広く親しまれている体位で、「捻りのポーズ、聖者マツィエンドラのポーズ、半分の魚の王のポーズ(アルダ・マツィエンドラーサナ)」などと呼ばれています。

1.一般的な魚の王の体位の一例

一般的な魚の王の体位の一例


一般的な魚の王の体位では、骨盤が後傾してしまうにもかかわらず、骨盤を起立/前傾しよう、背骨を中立/後屈しよう、胸骨を吊り上げよう、顎先を引こうなどと頑張っているので「不安定・不快適」であり、各所で勢力がぶつかり合い、各所に負担をかけることになります。

また、その頑張りを補助するかのように、床に下ろした左手を頼りに上体を支えつつ、膝を立てた左脚にかけた右手を頼りに上体を支えつつ、その左右の腕を頼りに、どうにかこうにか胸を開いて捻転しようと頑張っています。

膝を立てた状態では骨盤は自然と後傾するのです。それが「脚と骨盤の一致」という「原理」です。ストレッチなどでは、右脚を曲げずに伸ばした状態で捻転するのが一般的でしょうが、同じことです。また、体育の授業でお馴染みの「体育座り、体操座り」などと呼ばれる座り方も同じであり、たとえ股関節の柔軟な子供であっても、膝を立てた脚の状態で骨盤を立て、背骨を伸ばし、胸を開こうとすれば、心身に負担をかけることでしょう。

ヨガ指導者を含め、「姿勢」に携わる多くの人たちに「無・理」が起こるのは、この「脚と骨盤の一致」という「原理」を「無視」しているからだと言えるでしょう。それによって、「正しい姿勢=骨盤が立ち、背骨がS字カーブで……」などと部分的姿形に囚われてしまうのです。

この脚の状態であれば、前屈姿勢で捻転するのが正しい捻転姿勢です。

2.尾山ヨガ教室での魚の王の体位

尾山ヨガ教室での魚の王の体位


絵図2では、右足の上に骨盤を乗せ、左膝は立てずに寝かせてあります。この脚の状態であれば、骨盤は起立/前傾しますから、背骨は中立/後屈し、胸骨は吊り上がり、顎先は引かれます。

また、「腕の状態」も背骨の後屈・捻転に協力しています。また「頭顔の状態」は絵図1より下方を向いていますが、これも背骨の後屈・捻転に協力しているからです。


脚を組むことができなければ、山の体位、金剛の坐、椅子坐などの基本形で行えばいいのです。

無為自然

このように尾山ヨガ教室では、どの体位も一般的な形体とは異なる独自の形体ですが、これらは個人的、人為的に「考えた」訳ではありません。もちろん一般的な体位を参考にしているので、そういう部分では考えたところもあります。しかし根本的には、これらは身体に自然と「起こる」だけなのです。

● 自然体位(無為による全体一致)

無理を「しない」姿勢が自然体位である。何も「しない」でも、部分の変化に協力して全体が変化する姿勢が自然体位である。即ち、勢力の流れを邪魔することを「しない」ことによって、自ずから然りと収まる姿勢、それが自然体位である。

『ヨガの太陽礼拝』P30 1.調身行法 より

ですからそれは、合理(有機的、自然的、全体的)に基づく身体の使い方、姿勢であり、無理(機械的、人為的、部分的)を強いるストレッチや筋トレ、あるいは体操の類とは似て非なる身体の使い方、姿勢であり、根本的に異なるのです。

尾山ヨガ教室の体位は、無為ゆえに自然な体位なのです。

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レッスン4

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