第22章 地獄
本当ではないことを語る者、あるいは自分がしておきながら自分はしていないと言い張る者。両者とも死後は地獄に墜ち、他世においても同じ悪行の人間となる。
袈裟を首からかけていようと、悪い習慣※を制御していない者は多い。(そのような)悪人たちは、悪い行為によって地獄に再誕生する。
※ ダンマ(法)
もしもその(修行)者が、制御することなく徳行を破りながらも与えられたものを食べるのなら、炎のように熱い鉄球を食べる方が優れている。
汚れた心を放っておき、他者の妻(あるいは夫)に寄り添う者は、4つの問題に陥る。(第1に)不利益をもたらすこと。(第2に)満足に眠れないこと。第3に非難されること。第4に地獄に墜ちること。
不利益をもたらすことと死後は地獄に墜ちること(に加え)、脅えた男と脅えた女の楽しみは少しであり、王によって重い罰が与えられる(こともありえる)。そうであるから人は、他者の妻(あるいは夫)に近づくな。
ちょうど下手に掴んだ草が手を切るように、修行道もまた下手に行じるのなら地獄に引きずられる。
だらしのない行為、不純な(修行達成の)誓願、疑いのある修行生活※、何であれそれら(下手な修行)では、大きな成果はありはしない。
※ ブラフマチャーリヤ(梵行):世界の根本であるブラフマン(梵)に従う生活、聖職者(ブラフミン)の生活
もしもするべきことであるのなら、そのするべきことをしっかり努力せよ。だらしのない巡行者は、より多くのゴミをまき散らす。
後で苦しむような悪いことをするより、(何も)しないことの方が優れている。(なんとなしに何かを)するより、善いことをすることの方が優れている。そのようにするのなら後悔はないであろう。
内も外も見張り守られた国境の城壁のように、自分(の内も外も)を見張り守れ。一時も無駄に過ごすな。一時を失った者は、地獄に引き渡されて悲しむ。
恥じるべきではないことを恥じ、恥じるべきことを恥じない。(このような)誤った見解を保持することによって、人々は苦しいところ(地獄など)へ赴く。
恐れるべきではないことを恐れと見なし、恐れるべきことを恐れと見なさない。(このような)誤った見解を保持することによって、人々は苦しいところ(地獄など)へ赴く。
罪ではないことを罪であると思いなし、罪であることを罪ではないと見なす。(このような)誤った見解を保持することによって、人々は苦しいところ(地獄など)へ赴く。
罪であることを罪であると理解し、罪ではないことを罪ではないと理解する。(このように)正しい見解を保持することによって、人々は安らぐところ(天国など)へ赴く。
「地獄」と題されているように、ブッダが説いた言葉の中から、「地獄に関するもの」を主に取り上げています。第10章137句も参考になります。
悪いことをする者は悪いところ(地獄など)に赴き、善いことをする者は善いところ(天国など)に赴くというのが真理です。地獄に墜ちるほどの悪いこととは、「①悪意のない者を傷つけること ②他者のものを横取りしたり盗んだりすること ③他者の妻、あるいは夫と親交すること ④誰も見ていないからと嘘をつき誤魔化すこと」です。
このどれもが、自分さえよければ他者が傷ついてもよいとする傲慢な見解に基づいています。この傲慢さこそ、恥じるべき罪であり、恐れるべき罪であり、地獄への切符に他なりません。この真理を知って、手放すべきものを手放しなさいと説いているのでしょう。