第13章 世界
粗悪な習慣※に親しむな。汚れた心を放っておくことと共に暮らすな。誤った見解に親しむな。この世界(に対する執着)を増大させるな。
※ ダンマ(法)
汚れた心を放っておくことにならないように奮起せよ。善行である真理(に適った徳行)をせよ。真理に従って生活する者は、この世でもあの世でも安らぎの中で暮らす。
善行である真理(に適った徳行)をせよ。(真理に反した)悪行をするな。真理に従って生活する者は、この世でもあの世でも安らぎの中で暮らす。
(この世界は、現れてはすぐに消える)泡のようであると見よ。(実際には存在していない)蜃気楼のようであると見よ。このように世界を観察する者を、死王は見ることができない。
世界を見てこい。(荘厳に)飾られた王の車のようなものを。愚かな者はそこに溺れる。(しかし、世界は泡や蜃気楼と同じであることを)理解する者にとっては、執着(するような魅力)はない。
以前は汚れた心を放っていた者が、今後は汚れた心を放っておかなくなるのなら、その者は雲を離れた月のように、この世界を照らすであろう。
その者がした悪いことが、善いことで覆われるのなら、その者は雲を離れた月のように、この世界を照らすであろう。
この世界(の束縛)は、大多数の者には見えていない。ここで数少ない者だけが(この世界の束縛を)よく見る。(そして束縛から解放される)。数少ない鳥だけが網から自由になって空へ飛んでいくように。
白鳥は太陽の通り道をいく。(ある者は)神通力により中空をいく。賢い者は軍隊をもつ悪魔に打ち勝ち、この世界から連れ出される。
(「死んだらそこで終わり、私には何の報いも来ないであろう」などと)真理を犯して虚偽妄信を語り、来世を捨てた人間にとって、できない悪(行)はないであろう。
愚かな者は、他者に与えることを称賛しない。(このように)物惜しみする者が天国に行くことはない。賢い者は、他者に与えることを大いに喜ぶ。それによってその者は、あの世で安らぐ者となる。
大地で唯一の王になるよりも、天国に行くことよりも、あるいは全世界を支配することよりも、「一瞥でも真実を直観して智慧を得ること※」が、最も勝っている。
※ 預流果
「世界」と題されているように、ブッタが説いた言葉の中から、「世界の特性に関するもの」を主に取り上げています。第9章126句、第11章153句も参考になります。
人は、始まりのない無数の生と死の輪廻を流転しているというのが真理です。この世にある身体が死滅した者は、それまでにしてきた数々の行為に付き従い、ある者は母胎に、ある者は地獄に、ある者は天国に赴きます。そしてまた天国にいる者さえも、ある者は母胎に、ある者は地獄に赴くというように、人は果てしなく輪廻を流転し続けます。この繰り返される人生は苦しみでしかなく、何の魅力もありません。ですから、この世界とは、そしてこの『私』とは! 現れては消える実体のない幻想であるという真理を観察し、輪廻の束縛から解放されなさいと説いているのでしょう。