2013-05-07

ローゼンメソッド・ボディーワーク

気ままの雑記から習う

ローゼンメソッド・ボディーワーク 感情を解放するタッチング


「これは、私たちが『自分はこうであると思っている自分』から、『本当にそうである自分』への変容のワークなのです」

マリオン・ローゼン

これはヨガを含め、すべての「道」が向かっている方向性であることでしょう。

ローゼンメソッドとは、マリオン・ローゼン氏(1914~2012)が育てたボディーワークおよびムーブメントです。氏は、トラウマ的な体験は、感情を伴った無意識の記憶として、物理的な形状をもって、筋肉に保存されていると考えました。それはつまり、私たちは「筋肉の緊張」を通して、うまく取り扱えない「感情と記憶を抑圧する」ということです。
ローゼンメソッドとは、この筋肉の緊張を通して、抑圧された感情と記憶につながる方法であり、その直接的な目標は、慢性的な筋肉の緊張をゆるめることにより、抑圧された感情を解放することにあるといえるでしょう。

心を開く手助けをする「産婆」

ローゼンメソッドのプラクティショナーは、クライアントの身体(緊張した筋肉)に触れることにより、クライアント自身にその緊張の原因(無意識に抑圧された感情や記憶)を自覚させることを手助けするとしています。その結果として、クライアントの筋肉はゆるみ、呼吸、姿勢、動作、表情などの変化、痛みの喪失、各器官の機能的な働きの促進……などが起こり、さらにクライアントは、自分の人生に押しつけてきた限界を自分自身でつくってきたことを自覚するようになり、自分自身に違う行動をとることを許すという選択権を手にするに至るそうです。
これは、クライアント自身が”心を開く”(→ありのままの自分を包み隠さず見せる)ことを選ぶようになるということです。

私たちは、ありのままの自分を隠す(抑圧する)という自己防衛の手段を手放したときにはじめて、自分自身に心を開く(→ありのままの自分を受容する)ことができると同時に、他者に心を開く(→ありのままの自分を表現する)ことができるようになるといえるでしょう。

身体から読み取る

プラクティショナーは、クライアントの身体から多くの情報を読み取ります。以下、抜粋します。

……ローゼンメソッドのプラクティショナーは、人々がどのように動くのかに注目し、それから身体を見て、さまざまな部位がどのように組み合わさっているのか、またそれぞれの部位がお互いに均整がとれているのかどうかを確かめます。プラクティショナーが人々の身体のタイプに気づくのは、不協和音があってバランスが崩れているときです。たとえば、ある部位が別のところより大きいとか、より大きく存在を主張しているとかということです。プラクティショナーは、息が身体のどこに行き届いているのか、またはどこに行き届いていないのかを見ます。……

Chapter4 実践におけるローゼンメソッドを概観する
身体をリーディングする(p76)より

マリオン・ローゼン氏たちは、人々の身体を読み取る際に使ういくつかの考えを発展させて行くと同時に、呼吸の及ぶ範囲や、姿勢、動作などに共通するいくつかの傾向を見つけて行きました。

身体の緊張パターンの解説は、この本に詳述してあります。

横隔膜の重要性

マリオン・ローゼン氏が身体を読み取るうえで、とりわけ重要な部位としている横隔膜に関する箇所を抜粋します。

……身体で私たちが見る重要な部位は、横隔膜です。横隔膜は、無意識と意識との間の架け橋です。人は緊張しているとき、横隔膜を収縮させることによって、自分の感情を抑えます。横隔膜は、他の筋肉より繊細なのですが、それは自律神経(副交感神経系)とつながっているからです。さらに言うと、横隔膜は交感神経系と副交感神経系の両方とつながっているからです。横隔膜以外の筋肉はどうちらか一方だけにしかつながっていません。……(中略)……クライアントのこわばった横隔膜を解放することで、外面的にも、感情的にも劇的な結果がもたらされるのです。

Chpter6 筋肉、緊張、感情的態度、そして呼吸&br;(P124-125)より

同様に、ハタ・ヨガに取り組む上でも、”横隔膜”は最重要であると考えています。

最後のまとめてもらいます(笑)。この本の訳者である久保隆司氏は、ローゼンメソッドのプロセスを次のように述べておられます。

「対話/二人称」のボディーワーク

……ボディワーカーが両手で直接的に筋肉に触れることを通して、①「いま・ここ」の瞬間の場との対話、②ボディーワーカーとクライアントの間の言語的かつ非言語的な対話、③ボディワーカー内部の対話、④クライアント内部の対話などの多重的な心身における対話、が同時になされることによって、筋肉は緩み、その中に織り込められてきた感情を伴った記憶が浮かび上がってくるのです。そしてセッション中に意識的、無意識的に生起してくるさまざまな感情や記憶を尊重し、受容するという誠実な態度の中に「奇跡の場」が形成され、そこに「気づき」が生まれてきます。……(中略)……このような対話(または二人称性)は、本来的にほとんどすべてのボディーワーカーやマッサージにとっても、セッションの成否の根本に関わる重要な要素であることがご理解いただけるのでないでしょうか。

翻訳者あとがき 「対話/二人称」のボディーワーク&br;(p218)より

この本は、癒し(変容)に取り組むすべての人に知識と知恵を与え、その根本・本質へと導いてくれることでしょう!


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ローゼンメソッド・ボディーワーク 感情を解放するタッチング

ローゼンメソッド・ボディーワーク 感情を解放するタッチング

■著  者:マリオン・ローゼン
■執筆協力:スーザン・ブレナー
■訳  者:久保隆司(くぼ・たかし)
■発売 日:2013/3/29
■値  段:1575(税込)