2013-04-18

TMS理論

気ままの雑記から習う

ジョン・E・サーノ博士によるTMS理論をまとめてみました。腰痛、首痛、肩痛など、慢性的な痛みに悩んでいる方、ぜひお読みくださいませ。

TMS理論とは、ニューヨーク医科大学臨床リハビリテーションン医学科教授であり、ニューヨーク大学医療センター附属ハワード・A・ラスク・リハビリテーション研究所所属医師である、ジョン・E・サーノ氏が打ち立てた”疾患概念”です。
TMSとは、Tension Myositis Syndromeの頭文字を合わせた造語であり、「緊張性筋炎症候群」としています。サーノ氏はTMSを、「痛みを伴う筋肉の生理的変化」と定義しています。

筋肉という言葉を使ってはいますが、その発生には、「筋肉・神経・腱・靭帯」が関わっているとしています(筋肉はその代表格ということです)。首や肩、腰、臀部の「痛み(慢性的)」が発生するのは、「筋肉・神経・腱・靭帯」各々の異常(損傷)ではなく、共通のプロセスから生まれる同種の生理的変化であるとし、総じて「緊張性筋炎症候群」としました。

痛みの原因

そして、その痛みの発生原因は、血管収縮による虚血にともなった、軽度の酸素欠乏にあると仮定しました。またそれは、構造異常(損傷など)を原因とした痛みではないため、”無害である”としています。
たとえば、よく聞くところでいえば、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、神経根圧迫、脊椎分離症、脊椎すべり症、脊椎側弯症、変形性股関節症、軟骨軟化症(変形性膝関節症)、軟部組織疾患、滑液包炎、顎関節症候群、膝の腱炎、回旋腱板損傷(肩の腱炎)、反復性ストレス障害……などは、構造異常による痛みではなく、多くの場合それらはTMSであるとしています。

医学文献においても、構造異常が痛みの原因であることはめったにないという見解を支持しています。

TMS発生のメカニズム

さて、TMSが発生する原因は何か? それが問題です。それは「抑圧されている感情(怒り)」としています。(緊張性筋炎症候群の「緊張」とは、無意識下で生み出され、無意識の外に出ることのない感情を指しています)

脳は、精神的破局を回避するために、感情を「抑圧」すると考えられています。さらにTMS理論では、痛みを発生させる理由は、意識的思考を「身体(肉体的不快感)」に向けるさせることで、その「心(感情的不快感)」に向かないようにする脳(無意識)の働きであるとしています。

「抑圧」は無意識的な働きであり、意識的な働きではありません。

等価疾患

怒りの抑圧が原因で、消化器系、循環器系、免疫系、泌尿器系、生殖器系にも疾患が起こるとしています。たとえば、胃十二指腸潰瘍、下痢、頻便……緊張性頭痛、片頭痛、レイノー現象……ニキビ、湿疹、発疹……アレルギー(花粉症、アトピー、喘息など)、感染症……頻尿、膀胱炎、前立腺炎、勃起不全……低血糖症、めまい、耳鳴り、慢性疲労症候群……などなどです。

TMS発生を止める方法

さて、痛みを止めるにはどうすればいいのか? それが本当の問題です。

学習させる

① TMS発生のメカニズムを認識する

  • 肉体的構造異常が痛みの発生原因ではないことを認識する
  • 感情(怒り)の抑圧が、痛みの発生原因である事を認識する
  • 脳は、注意を肉体に向けさせるために痛みを発生させていることを認識する

② TMS発生のプロセスを認識する

  • 抑圧している怒りを認識する
  • 抑圧している怒りと痛みの関係性(プロセス)を認識する

①の「TMS発生のメカニズムを認識する」だけでも、また「抑圧している怒りを認識しようとする」だけでも、痛みが消えることがあるそうです。つまり、痛みの原因は肉体ではなく心にあることを認識し、意識的思考を肉体から心に向けるだけでもTMSが消えることがあるということです。

氏は著書『心はなぜ腰痛を選ぶのか-サーノ博士の心身症治療プログラム』の中で、《注意の焦点を身体から心に移すことによって、痛みの利用価値を剥奪し、その目的をくじいて、何を隠蔽しようとしているのかを暴くことができる》と述べておられます。

また、『サーノ博士のヒーリング・バックペイン』をじっくり読んだだけで痛みが消えたという多くの報告があるそうです(読書療法)。氏はその中で《回復するためにもっとも重要なことは、何が起きているのかを本人が理解することだ。つまり、情報こそが、この疾患の特効薬「ペニシリン」である。》と述べておられます。

注意

では、『サーノ博士のヒーリング・バックペイン』からの引用を載せておきます。

1.毎日の注意

  • 痛みは構造異常ではなくTMSのせいでおこる
  • 痛みの直接原因は軽い酸素欠乏である
  • TMSは抑圧された感情が引き起こす無害な状態である
  • 主犯たる感情は抑圧された怒りである
  • TMSは感情から注意をそらすためにだけ存在する
  • 背中も腰も正常なのでなにも恐れることはない
  • それゆえに身体を動かすことは危険ではない
  • よって元のように普通に身体を動かさなくてはいけない
  • 痛みを気に病んだり怯えたりしない
  • 注意を痛みから感情の問題に移す
  • 自分の管理するのは潜在意識ではなく自分自身である
  • 常に身体ではなく心に注意して考えなければならない

-第四章 TMSの治癒 ▼「毎日の注意」を復習する(p102)-より

次に、『心はなぜ腰痛を選ぶのか-サーノ博士の心身症治療プログラム』から、氏の警告を載せておきます。

2.警告

……腰痛に関する私の著作を読んで改善したという手紙が数多く届いているという事実は、情報に心身症を逆転させる力があることを明確に示している。しかし、ご自分の症状が心身相関のプロセスによるものだとみなすのは、必ず主流医学の医師のもとで適切な検査を受け、重篤な疾患でないことが確認できてからでなくてはならない。

-第9章 治療プログラム 代替医療(p216)-より

最後に、同著の最後の言葉を載せておきます。

おわりに

心身症とその治療法について、忘れてはいけない重要なポイントとは何か。  まず、TMSとその等価疾患の多くは''本質的に無害''だということ。症状の重さによっては簡単に信じられないかもしれないが、間違いなく無害である。

 

心身症の身体症状は現代社会に蔓延しているが、これは、現代人が心や頭に異常があるとか、精神病にかかっているとかいう意味ではない。

 

人間は思っている以上に''強靭''であり、身体に生じている現象を左右する力を持っている。しかし、その方法は学習しなければならない。

 

本書で述べてきた心身症については、その発症プロセスを知ること、特にそれが心理的要因によって引き起こされているという情報を得ることが必須であり、それによってほぼ例外なく”治癒”に至る。(※ 「実際には何ら”治癒”すべき異常は存在していない」と著書の中で述べておられます。)

 

最大の敵は”恐怖心”と”誤った情報”だ。感情の生まれる領域には”ふたつの心”が存在する。論理や理性が意識の心に特有なものであることは一般的に認められているが、無意識の心を判断するのに、この論理や理性を物差しにするという間違いを犯してはならない。

 

心と身体は切り離すことのできないものであり、常に相関関係にある。この心身相関関係は、途方もない複雑さと驚異を秘めた、人間というすばらしい有機体に大いに役立つものである。

-第9章 治療プログラム おわりに(p217・218)-より


次の雑記

雑記44

参考にした文献

サーノ博士のヒーリング・バックペイン

サーノ博士のヒーリング・バックペイン

■著 者:ジョン・E・サーノ
■監訳者:長谷川淳史(はせがわ・じゅんし)
■訳 者:浅田仁子(あさだ・きみこ)
■発売日:1999/4/20
■値 段:\2100(税込)


心はなぜ腰痛を選ぶのか サーノ博士の心身症治療プログラム

心はなぜ腰痛を選ぶのか サーノ博士の心身症治療プログラム

■著 者:ジョン・E・サーノ
■監訳者:長谷川淳史(はせがわ・じゅんし)
■訳 者:浅田仁子(あさだ・きみこ)
■発売日:2003/10/20
■値 段:\2100(税込)