2013-11-27
自律神経
交感神経と副交感神経
自律神経の中枢は視床下部(爬虫類脳)にあり、生命活動の中枢を担っています。交感神経と副交感神経という拮抗し合う2つの神経を機能させ、生命を維持する役割を果たしています。
体外的に危険と判断すれば交感神経を活発にし、体内秩序を鎮静化し、身体運動を活性化することにより危険を回避し生命体を守ります。体内的に危険、もしくは体外的に安全(危険が無い)と判断すれば副交感神経を活発にし、身体運動を鎮静化し、体内秩序を活性化することにより危険を回避し生命体を守ります。
2つのバランス
一年単位では夏は交感神経優位で活動的になり、冬は副交感神経優位で吸息的になると考えられ、月単位では満月は交感神経優位で活動的なり、新月は副交感神経優位になると考えられ、一日単位では昼は交感神経優位で活動的になり、夜は副交感神経優位で休息的になると考えられ、呼吸単位では、吸気は交感神経優位で活動的になり、吐息は副交感神経優位で休息的になると考えられます。※ 吐き方にもよります
表1.自律神経の波
体外的 | 体内的 | 年 | 月 | 日 | 呼吸 | |
交感神経優位 | 危険 | 安全 | 夏 | 満月 | 昼 | 吸 |
副交感神経優位 | 安全 | 危険 | 冬 | 新月 | 夜 | 吐 |
ストレス反応
何らかの刺激により、神経系が知覚情報を受信・感知すると、その情報が危険かどうかを判断します。危険(体外的)と判断すれば爬虫類脳は交感神経優位にし、身体運動の活性化をし危険に対処しようとエネルギーを生み出す反応をします。この反応がストレス反応です。
1.爬虫類脳・旧哺乳類脳の場合
野生動物は、逃走反応か闘争反応、もしくは凍結反応を起こして、本能のままに危険への対処をします。身体運動のために生み出したエネルギーを使用します。
2.新哺乳類脳の場合
ヒトは、逃走反応か闘争反応、もしくは凍結反応をせず、理性によって抑圧することがあります(抑圧しても生命を維持できるので)。身体運動のために生み出したエネルギーを溜め込みます。
解放反応
ストレス反応による交感神経優位によって、身体運動を活性化をするために生まれたエネルギーの残り(残余エネルギー)を処理し、交感神経を鎮静化する反応のことです。
1.爬虫類脳・旧哺乳類脳の場合
危険が去った後には、身体をブルブルと振るうことにより解放反応(残余エネルギーの処理=ストレスの発散)を起こして、交感神経を鎮静化すると考えられます。
2.新哺乳類脳の場合
危険が去った後(または最中)には、ガタガタ震えるのですが、それが怖い、嫌、恥ずかしい、、、などと解放反応を理性によって抑圧することで、エネルギー処理を完了することができなくなることがあります。(伸びや、欠伸、貧乏ゆすり、寝相なども解放反応の一つと考えられます。)
ヒトに「ああしたい、こうしたい」などという意志が生まれると、その思い通りに実現するためのエネルギーが生まれます。ところがその物事が思い通りにいかないとなると、不安、怒り、悲しみ、妬み、憧れ……などと、生み出したエネルギーを溜め込んだままの状態になります。このストレス状態は、身体運動系(交感神経)が活性化(興奮・緊張)したままということであり、体内秩序系(副交感神経)の働きは滞っていくと考えられます。
理性(新哺乳類脳)がこの解放反応をストップさせているようです。ですから、解放反応を促すことを理性的に行うことでも、解放反応をストップしている理性の働きを解除することでも、この生理的プロセスを再活動させ・完了させることになると考えられます。それは交感神経は鎮静化し、副交感神経が活性化し、体内秩序を回復させることになると考えられます。そしてそれは、溜め込んでいた不安、怒り、悲しみ、妬み、憧れ……からの解放をも意味しています。
自律神経反射
内臓は、主に自律神経によって制御されています。自律神経によっておこる内臓の働きは自律神経反射といわれ、大きくは次の3つに分類されています。
①内臓-内臓反射:
内臓からの刺激情報を受信すると、
内臓への指令情報を送信する反応
②体性-内臓反射:
五官からの知覚情報を受信すると、
内臓への指令情報を送信する反応
③内臓-体性反射:
内臓からの刺激情報を受信すると、
骨格筋への運動情報を送信する反応
ヒトが意識的に内臓に作用をさせることができるのは、主に②の体性-内臓反射ということです。
これにより人は、知覚情報を意識的にコントロールすることにより、交感神経と副交感神経のコントロールをすることができるということでもあります。
表1.臓器と自律神経の関系 色の臓器は腺(分泌作用をもつ器官)
臓器 | 機能・作用 | 交感神経 | 副交感神経 |
瞳孔 | 光量 | 増加 | 減少 |
水晶体 | 遠近 | 遠視 | 近視 |
涙腺 | 涙分泌 | - | 促進 |
唾液腺 | 漿液性唾液分泌 | - | 促進 |
粘液性唾液分泌 | 促進 | - | |
心臓 | 運動(拍動) | 促進 | 抑制 |
運動力 | 促進 | 抑制 | |
血管 | 心臓血液量 | 増大 | 減少 |
骨格筋血液量 | 増大 | 減少 | |
末梢血液量 | 減少 | 増大 | |
汗腺 | 汗分泌 | 促進 | - |
立毛筋収縮 | 毛を逆立てる (威嚇・鳥肌) | 促進 | - |
気管支 | 酸素量 | 増大 | 減少 |
肝臓 | 血糖値 (グリコーゲン分解・合成) | 上昇 | 下降 |
胃 | 運動 | 抑制 | 促進 |
膵臓 | 膵液分泌 | 抑制 | 促進 |
インスリン分泌 | - | 促進 | |
小腸 | 運動 | 抑制 | 促進 |
大腸 | 横行結腸運動 | - | 促進 |
下行結腸運動 | - | 促進 | |
上行結腸運動 | 抑制 | - | |
副腎 | アドレナリン分泌 | 促進 | - |
腎臓 | レニン分泌 | 促進 | - |
子宮収縮 | 防衛 | 促進 | - |
膀胱 | 排尿 | 抑制 | 促進 |
男性生殖器収縮 | 防衛 | 促進 | - |
参考:『身体の地図帳』講談社
自律神経 まとめ
- ストレス反応は、生体が生きるために必要な反応
- ストレス解放反応は、本来生体に備わっている
ハタ・ヨガでは、体位法、調気法などの意識的身体操作により自律神経反射(体性-内臓反射)を作用させていることでしょう。交感神経と副交感神経へと働きかけ、溜め込んだままの残余エネルギー処理プロセスを促し、