2020-12-13

2020-06-17

締付(バンダ)を促す3つの秘訣

雑記

締付と脱力とは、交互にバランスよく繰り返すことにより、心気を停滞質に傾ける月気道と、心気を激動質に傾ける太陽気道への生気の流れを阻止し、心身を浄化し調える方法と言える方法です。今回は、その締付の秘訣についてのお話です。

締付と脱力についてはこちら

レッスン3

締付の極意

締付とは、部分的に腹を締め付けたり、会陰を締め付けたり、ノドを締め付けたりしても、あるいは同時に、腹、会陰、ノドを締め付けたとしても、それだけでは極まりません。なぜなら締付とは、全体が一致して締付けられたときにだけ起こるものだからです。

締付は全体一致の「伸び」のなかで自然と起こることです。つまり、この自然と起こる「伸び」の感覚を締付行法のなかで再現できるのであれば、それはもう締付の極意を達成していると言えるのです。

それではまず、締付の極意とも言える「伸び」について見ていきます。

伸び

伸び

伸び :

「ん"〜〜〜っ!」などと身体を緊張させる反射作用

伸びする

その身体。猫や犬のようにその時々の身体の状態に合った多様な「伸び」が事あるごとに起こっているでしょうか? もし起こっているようなら、おそらく「締付」を極めることは造作もないことであり、「締付」の練習をすること自体も無用なのかもしれません。さてここで、勘違いしている方もおられることでしょうからお伝えしておきます。

「伸び」は「ストレッチ」ではありません。

「伸び」は身体を緊張させる反射であり、決して、それは身体を伸張させる行為ではありません。また、自然の反射である「伸び」は全体的であり、「ストレッチ」のように部分的に筋肉を伸ばすというような不自然な行為ではありません。

● 締付と伸び

締付に伴い起こる緊張感覚は、伸び(欠伸も含む)に伴い起こるそれと同じであり、それは筋肉が「ぎゅううう」と緊張する快適な感覚である。
伸びとは、身体を緊張させた後に弛緩させることにより、滞った生気の流れを取り戻そうとする生体反応であり、元来生体に備わっている身体調整である。

『ハタ・ヨガの修行法』P19 締付と脱力より

今もこのように説明しておく必要があるように、「伸びする」などと一言でお伝えしたところで、ほとんどの方はできないものです。つまりロボットのように「機械的、人為的、部分的」に身体を緊張させることができたとしても、犬や猫に見られるように「有機的、無為的、全体的」な緊張、つまり「伸び」を作用させることはできないのです。

そこで役立つのが3つの秘訣という訳です。

締付の秘訣

演技をすることによって、「有機的、無為的、全体的」な緊張が自然と作用してくれます。

締付を促す3つの秘訣

精一杯:

「おぉ〜〜〜っ!」などと身体を緊張させる反射作用

痛がる:

「痛て〜〜〜っ!」などと身体を緊張させる反射作用

驚く :

「えぇ〜〜〜っ!」などと身体を緊張させる反射作用

それでは、一つずつ見ていきます。

1.精一杯

実のところ、要所である鳩尾、鼠蹊窩、腋窩、盆窪、眉毛を精一杯方向付けることが出来さえすれば締付は極まるものです。しかし多くの方々は、本当の精一杯が出来ず、部分的・機械的な方向付けになってしまい、精一杯しようとすればするほど身体に無理、負担を強いてしまうのです。

そこで、この「本当の精一杯」を実行するために「力を出しきろうとする演技」をします。あたかも火事場の馬鹿力を奮い立たせるかのように、要所である「鳩尾、鼠蹊窩、腋窩、盆窪、眉毛」を精一杯、力の限り方向付けようとする臨場感ある演技をするということです。

演技をすることのポイントは、実際に力の限り方向付いているかどうかよりも、精一杯、力の限り出しきるときと同じ体勢を作り出すところにあります。臨場感ある演技をするなら、身体は自然とその力を発揮するときの全体一致の体勢へと形作られることでしょう。

2.痛がる

痛がる

痛がる演技をすることであり、しかめっ面をして「痛ててててっ……!」と表現することです。それだけのことなのですが、前々回の記事でもお話をしましたように、あえて部分的な要点をいうなら、の降下が伴って緊張していることです。

絵図での実際は、痛がっている演技をしているのではなく、下顎を左にずらした姿勢における締付です。

3.驚く

驚く

驚く演技をすることであり、びっくり顔をして「えぇぇぇぇっ……!」と表現することです。それだけのことなのですが、ここでもまた同じであり、あえて部分的な要点をいうなら、の拳上が伴って緊張していることです。

絵図での実際は、驚いている演技をしているのではなく、遠くを凝視した姿勢における締付です。

身体の自然を呼び覚ます

ここでの「精一杯すること」「痛がること」と「驚くこと」に共通している要素は、どれも危険を認識したときであり、生命力を活性化する必要に迫られたときに起こる生理的な反射作用であり、それはまた生命の中枢を司る爬虫類脳に起こる生理的な反射作用であるとも言えるでしょう。

爬虫類脳についてはこちら

雑記47

要するに、全体不一致に慣れきった不自然な身体であっても、生命の危機的状況の中では、全体が一致しやすく、自然な身体のつながりが目覚めやすいと言えるでしょう。つまり尾山ヨガ教室では、この原始的な生体反応を「伸び(締付)」に活用している訳です。 いわゆる「火事場の馬鹿力」もまた原理は同じと言えるでしょう。

臨場感あふれる演技。これが眠っている爬虫類脳を目覚めさせ、勢力が流れるべきところに流れ渡り、全身が繋がってくれるという訳です。

締付により、生き生きとした身体の元気を目覚めさせましょう。


次の雑記

雑記83