2020-07-02

2020-05-15

第10章 罰

ダンマパダ:真理の言葉


129

すべての者は暴力に震え、すべての者は死を恐れる。自分を(よい)例えとして殺すな、殺させるな。

130

すべての者は暴力に震え、すべての者にとって命は愛しい。自分を(よい)例えとして、殺すな、殺させるな。

131

自分の安らぎを求める者が、安らぎを願う生きものを暴力で傷付けるのなら、その者は死後に安らぎを得られない。

132

自分の安らぎを求める者が、安らぎを願う生きものを暴力で傷付けないのなら、その者は死後に安らぎを得る。

133

誰にも(怒りにまかせて)暴言を言うな。言われた者はあなた言い返すであろう。激怒した言葉(に接すること)は苦しいため、暴力の返答があなたに接するであろう。

134

もしも(音のならない)壊れたドラのように、(叩かれようと)自分を動かさない(静かな)者。その者は涅槃を得た者である。(その者の)激怒は見つけ出されることがない。

135

牛飼いが棒(で叩くこと)によって牛を牧場に追い立てるように、老いと死とが、生きものの命を追い立てる。

136

愚かな者は悪いことをしながらも自覚していない。智慧のない者は自分の行為によって、焼かれた者のように苦しむ。

137~140

暴力を振るわない者、悪意のない者を、暴力により傷付けるのなら、10のうちの1つの状態に即座に陥る。

①激痛 ②身体の損失 ③身体の死滅 ④重病 ⑤錯乱 ⑥王からの災難 ⑦恐ろしい非難 ⑧親族の滅亡 ⑨破産 ⑩家の全焼

智慧のない者は、身体が死滅してから地獄に再誕生する。

141

裸でいる行も、髪をもつれさす行も、身に泥を塗る行も、食を断つ行も、露地に横たわる行も、あるいはゴミや埃にまみれる行も、(長いあいだ)屈むなどといった行も、(真理への)疑いを拭っていない人間を浄めはしない。

142

着飾っている者であろうと正しく行い、根本※1に従う生活をしている者。調教により静かに落ち着いている者。すべての生きものへの暴力を放棄している者。その者は、聖職者※2、その者は出家者※3、その者は托鉢僧※4(と呼ぶに値する)。
※1 ブラフマン(梵) ※2 ブラフミン(婆羅門) ※3 サマナ(沙門)※4 ビク(比丘)

143

自分を省みて恥じることにより自制する者が、この世界に誰か見つけ出せるであろうか? その者は非難を気にかけない。良馬がムチを気にかけないように。

144

(世界のことなど気にすることなく走る)ムチをあてられた良馬のように。熱心さによって、厭離心によって、(真理への)信心によって、徳行によって、精進によって、三昧によって、真理を確立することによって、明知と行動とを備えることによって、観照ある者は少なくないこの苦しみを捨てるであろう。
※ 汚れた世界を嫌い離れようする心

144

治水工事をする者は水流を調え、矢を作る者は矢を調え、大工は木材を調え、善行者は自分を調える。


第10章 解説

「罰」と題されているように、ブッダが説いた言葉の中から「罰に関するもの」を主に取り上げています。また、悪いことの代表として、他者を傷付ける暴力を取り上げています。

要点
悪いことをしたなら、必ず苦しい罰が当たるというのが真理です。また、暴力は「貪愛、憎悪、誤謬」を因として起こる悪いことですから、故意に誰かを傷付けたのなら、その心意に値するだけの報いを免れることはできません。そしてまた、自分と同じように誰もが暴力を恐れ、傷付つくことを避けていることを忘れてはいけません。悪いことは自他を害する脅威であると見なし、その愚かな行為を止めていきなさいと説いているのでしょう。

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