2020-07-02

2020-05-15

第6章 賢者

ダンマパダ:真理の言葉


76

財宝(のありか)を教える者のように、過失を指摘し叱責する智慧ある者に会うのなら、そのような賢い者に親しめ。そのように親しむ者には、より善いことはあり、より悪いことはない。

77

不正なことから遠ざけるように、警告し、教示せよ。その者は善人に愛され、悪人に愛されない。

78

悪い友と親しむな。最低の者と親しむな。善い友と親しめ。最高の者と親しめ。

79

真理を飲む者は、清らかな心によって安らかぎのなかに住む。聖者に説かれた真理のなかで賢い者は常に楽しむ。

80

治水工事をする者は水流を調え、矢を作る者は矢を調え、大工は木材を調えるが、賢い者は自分を調える。

81

風に動じない一塊の岩のように、賢い者は非難称賛のなかで動じない。

82

清らかで濁りのない深い湖のように、賢い者たちは諸々の真理を聞いて清らかである。

83

善人はすべてに対する執着を捨てており、愛欲から愛欲へと求めることなく静かである。賢い者たちは、(幸福な)安らぎや(不幸な)苦しみに触れようとも、(喜んだり悲しんだりと気分の)高低を見せることはない。

84

自分のために、他者のために、子を欲せず、財を欲せず、国を欲せず、真理に反して自分の成功を欲することはない。その者は、徳行を守り、智慧ある、真理に従う者である。

85

そのような者たちは数少ない。人々の中でその者は彼方なる岸に行く者である。しかしこの他の人々は、(こちらの)岸のみを走り回っている。
※ 彼岸:この世界の彼方

86

正しく説かれた真理において真理に素直に従う人々は、極めて越えがたい死王の領域を超えて、彼岸に行くであろう。

87

賢い者は、黒い習慣※1を捨てて、家のある生活から、家のない生活に入り、娯楽もなく離れたところで、白い習慣※2を修習せよ。
※1 黒いダンマ:悪い習慣 ※2 白いダンマ:善い習慣

88

賢い者は、心にある煩悩から離れて自分を浄化するがよい。諸々の愛欲を捨てて何物もないことに喜びを求めるがよい。

89

それらの覚りへ向かう方法において心は正しくよく修められる。執着を捨て離れることにおいて、無執着を楽しみ煩悩を滅ぼし尽くす者たち。その者たちは完全な涅槃に入りこの世界で光り輝く。


第6章 解説

「賢者」と題されているように、ブッダが説いた言葉の中から「賢い者の特性に関するもの」を主に取り上げています。

要点
賢い者は、自分で自分を苦しめているという真理を理解しています。つまり苦しみは「貪愛、憎悪、誤謬」などの汚れた心に従うことから起こるという真理を理解しています。それを理解しているからこそ、自分で自分を苦しめるという愚かな行為を止めていき、ついには至高の安楽である涅槃に至ります。何より大切なことは、真理に疎い愚かな者と親しむのではなく、自分で自分を苦しめているという真理を教えてくれるような賢い者と親しみ、真理に親しみ、真理を理解することですと説いているのでしょう。

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