2020-08-??

第17章 3信心の分別

バガヴァッド・ギーター:至高者の詩


第17章 解説

「3信心の分別」と題されているように、3種類の信仰について、クリシュナが説明しています。

あらすじ

アルジュナが、聖典を無視して個人的信心を崇める者たちは、純粋質、激動質、停滞質のいずれの性質に属しているのかを問います。

クリシュナが、個人の信心には個々の自然性に従い純粋質、激動質、停滞質の3つの信心があると説き、そしてその個人的信心こそが、その個人そのものであると告げます。

そしてその3信仰に基づく祭儀、苦行、布施に加え、食性について説いていきます。

純粋質の信心
  1. 祭儀
  2. 聖典に従い天の神々を崇めて果報を求めない

  3. 苦行
  4. 果報を求めない

  5. 布施
  6. 敬意をもって適切。見返りを求めない

  7. 食性
  8. 生命力に溢れ、健康、安楽、喜びを増進する、栄養に富み、適度な油分、歯応え、旨味のある食べものを好む

  9. 死後
  10. 天国へ昇り、賢者の母胎に再誕生する。あるいは生死の終焉

激動質の信心
  1. 祭儀
  2. 鬼神、悪魔を崇めて果報を求める

  3. 苦行
  4. 好意、名誉、尊敬などの果報を求める

  5. 布施
  6. 物惜しみして、見返りを求める

  7. 食性
  8. 刺激が過剰で、病気、苦悩、悲しみを増進する、辛い、酸っぱい、塩っぱい、熱い、渋い、乾燥している食べものを好む

  9. 死後
  10. 地上に再誕生する

  • 特性
  • 喜びと悲しみを繰り返す

停滞質の信心
  1. 祭儀
  2. 幽霊、悪霊を崇めて、聖典に従わず、供物も捧げず、供養の言葉も唱えず、祭司に寄与せず、信心ない

  3. 苦行
  4. 誤解に基づく

  5. 布施
  6. 非礼、嘲笑、不適切

  7. 食性
  8. 生命力も刺激も不足し、新鮮でない、味がしない、腐っている、不浄な食べものを好む

  9. 死後
  10. 地獄へ堕ち、愚鈍な母胎に再誕生する。あるいは更なる地獄へ堕ち続ける

  • 特性
  • 自己と他者とを破滅させる

続いてクリシュナが苦行について説いていきます。

苦行
  1. 身体の苦行
  2. 神、聖職者、ヨガ教師、智者などへの礼拝
    清潔、誠実、梵行、非傷害

  3. 言葉の苦行
  4. 不安を与えない言葉、真実の言葉、有益な言葉、繰り返しの聖典読誦

  5. 心意の苦行
  6. 静かな心意、柔和、沈黙、自制、清浄な心理状態

続いてクリシュナが「オーム」「タット」「サット」の3つの言葉が根本を覚えておく合図になると説いていきます。

根本を指示する3語
  1. オーム
  2. 聖職者たちは聖典に従い、「オーム」と唱えることから祭儀、苦行、布施を始めることによって、まず初めに根本に心意を向けることをする。

  3. タット
  4. 生死からの解放を求める者は、「タット」と唱えることから祭儀、苦行、布施を始めることによって、世俗的果報を期待するのではなく、根本に至ることを期待することをする。

  5. サット
  6. 「サット」は実在、あるいは善良を示し、また称賛される行為に対して用いられる。祭儀、苦行、布施の3行為もまたサットと呼ばれ、それを為すこともまたサットと呼ばれる。

最後にクリシュナが、信心なく果報を期待して供えられる祭儀、与えられる布施、熱せられる苦行は「非サット」と呼ばれ、現世においても他世においても無益であると説明します。


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