第13章 知られるものと知るものの分別
サンジャヤよ、美徳※の地(我ら)クル族の地において戦おうと集められた我が息子たちとパーンドゥの息子たちは何をしておるのか?
※ ダルマ(法):真理、道徳、正義、教義、習慣
「知られるものと知るものの分別」と題されているように、「知られるもの」と「知るもの」について、クリシュナが説明しています。ここでの「知られるもの」の原語は『kṣetra(クシェートラ)』であり「土地、用地、田地」などを示しています。また「知るもの」の原語は「土地」と「智慧」とを合わせた『kṣetrajñā(クシェートラジュニャ)』であり「土地を知るもの」などを示しています。
あらすじ
クリシュナが「知られるもの(身体)」と「知るもの(智慧)」について説いていきます。
- 5大元素 :地、水、火、風、空
- 感覚対象 :色、音、香、味、体感
- 感覚器官 :眼、耳、鼻、舌、身体
- 行為器官 :運動器官、発声器官、思惟器官、排泄器官、生殖器官
- 自我観念 :自己感覚
- 知覚器官 :知覚、認識、判断、理解
身体はこれらの要素から形成されており、欲望と憎悪、安楽と苦悩などを伴っていると、大まかな特徴を説明します。
続いてクリシュナが、智慧について説明します。
謙虚、正直、非傷害、忍耐、誠実、師事、清潔、落ち着き、自制、感覚対象への離欲、無私、生老病死を苦しみと見なす。
子供、配偶者、住居などにも愛着しない。喜・快・楽と悲・苦・痛とに心乱れることがない。
至高者への確固たる信愛、人との交際を楽しまず、世間の喧騒から離れた静寂なところに暮らし、油断なく自己に留まり、自己の本質を見極める。
智慧はこれらの特徴を備えており、これらに反するものが無智であると説明します。
続いてクリシュナが「自然性」と「意識性(魂)」について説明します。
- 万象を転変させている気質の原因
- 行為(気質作用)の原因
- 行為に原因と結果が生起する原因
- 安楽と苦悩を享受する原因
身体における意識性は、「監視者、認可者、保持者、享受者、大主」などと呼ばれる。
クリシュナが、身体における意識性により、自然性から起こる気質が享受されると説きます。つまり、意識性と気質との接触が安楽と苦悩を享受する原因であり、享受(人生経験)とは「知られるもの(自然性)」と「知るもの(意識性)」の結びつきを原因としていると説明します。
続けてクリシュナが、この自然性と意識性の本質(分別)を覚る者は、再誕生から解放されると説きます。そして、「瞑想ヨガ、理論ヨガ、行為ヨガ」などによって智慧の目を持つ自己により自己を直観するのなら、「知られるもの(自然性)」と「知るもの(意識性)」の本質を覚ると説明します。