心身習学の後に

心と身体を一から習う

ハタ・ヨガの目的(・_・!

ハタ・ヨガ(身体君を動かすヨガ)も、本来その目的の頂にあるものは……「心の作用を止めること」であり、やはり瞑想をするためのものでもあります。

瞑想とは、思考君の走りを静め、最終的に止めることを目的としたものです。そのためにはまず、アッチコッチと走り回らないよう、ある対象に思考君の注意を集中し続ける必要があります。集中し続けるとは、意識を保ち続けることです。集中が途切れるとは無意識になり、思考君が走り出すことです。これがいわゆる雑念が浮かぶときです。
無意識に浮かぶ雑念に気付く(意識を取り戻す)ことで、集中の対象に思考君を戻す。一度浮かんだ雑念は、次に浮かびにくいという仕組みが頭にはあり、これを繰り返すことで、思考君は徐々に静まっていくというのです。

ハタ・ヨガでは、呼吸や動作をゆ〜っくりと行い、さらに呼吸と動作を合わせて行います。理由は色々とありますが、本来の目的は、やはり思考君の働きを静めるためでしょう。

この瞬間瞬間変わり続ける「今」に在り続けるためには、ゆっくりと取り組むことがとても有効です。ゆっくりというのは、無意識にはできないというのがポイントです。呼吸と動作を合わせると、さらに無意識にはできなくなります。
それは思考君を「表現の場」に縛り続けることになり、「思考の場」に行こうとする思考君は、快走することができなくなるのです。ゆっくりな呼吸や動作は、思考君を「今・ここ」に縛り付けるには、もってこいなわけです。

それはまさに「ヨガ」という言葉君の語源といわれる「くびきを付ける」ということなのです。

また、意識しているとは、今の自分の不自然な呼吸も、決まらないポーズも、ぎこちない動作も、ただ観察するということ。そのままを受け入れるということ。それは今までに作ってきた評価基準をリセットしていく作業であり、無意識に暴走しだす思考君をより静めることにもなるのです。

ハタ・ヨガにはたくさんのアサナ(静止するポーズ)やヴィンヤサ(動きのある体操)があります。
そしてそられは、呼吸・姿勢・動作を身体君が喜ぶように行うことで、身体君の調整に素晴らしい効果があります。
心(気分)がいいのも悪いのも、それは身体君の状態であり、身体君の状態を調整することで、心も調整されるのです。

―― また、①身体君の調整がされると、②同時に心(気分)はよくなり、③いい気分になるようなことしか心(思考君)に浮かばなくなるという△サイクルも流れ出します。つまりそれは心(思考君)の調整にもなるということです。

―― 身体君の調整がされ、健康で丈夫で美しいということが、人が「生きる」という上での安心満足の土台といえるかもしれません。ですから身体君の調整がされるということは、生きることの土台にある不安不満から解放されることでもあり、余計な「思考君の空回り」が起こることもなく、よりいい気分でいやすいという心の調整になるのです。

―― 身体君が喜ぶようにしようという心(思考君)の方向性は、自分が使っている身体君に感謝する方向や身体君を大切にする方向、また身体君を信頼する方向などを向くことになります。ハタ・ヨガを続けることで、そんな心を育んでいくことになる。つまり習慣にしていくことになるのです。
そんな心の方向性は、余計な不安不満を生み出すことがなくなるため、余計な「思考君の空回り」が起こることもなくなりますから、心の調整にも素晴らし効果があるといえるのです。

ハタ・ヨガの目的は、ヨガの王道であるラジャ・ヨガ(瞑想ヨガ)の目的である「心の作用を止滅すること」に近づく道であるといえるのかもしれません。

ハタ・ヨガの目的(^_^!!

もう一つはもちろん「いつでもいい気分でいるため」。

  • 幸福感とは人がどのような状態のときに感じるのか?

さあ、あなたの思考君から簡潔な答えが出てるでしょうか?

人は元々幸福感にあふれている(^_^)でも、思考君が過去や、未来という頭の中にある幻想の場を走っていると、空回りすることになり、幸福感から遠ざかるということでした。幸福感は思考君が走っていないときである「今・ここ」に在るということです。
現実とは「今この瞬間」であり、そこに不幸は存在できないというのです。意識しているとき。「今・ここ」に在るとき。実はそれだけで、人は幸福感に満たされるのです。

この本に書いてあることは、いい気分でいるための合理的な方法であり、また「思考君の空回り」、いわゆるネガティブシンキングを止める方法でもあります。

まず―― 気分をよくするためには、身体君が喜ぶ表現をしていればいいのでした。

次に―― 物事を解決したり、諦めたり、放っておいたり、欲の本質を理解しシンプルに捉えたりと、頭の中の整理整頓をすることで、小さな欲や矛盾した欲をなくしたり……。
自分の思考君がなぜに走り回っているのかを理解することでも、「思考君の空回り」を止めることができるのでした。

Simple is the best !!

さらに―― 世界や物事、身体に対して、不平不満が起こらないような新しい解釈を与え、世界を認識し直すことでも「思考君の空回り」は起こらなくなるのでした。

そして―― 無意識の反応を意識すること。それは自分を観察すること。「今」思考君が走っている場、そこから湧き上がる気分・呼吸・姿勢・動き……などに対して何の抵抗・否定・批判・分析・判断・拒絶……などもせず、意識すること。それは自分を愛するということ。それはすべてがありがたいものであることに気付くということ。

すべてを公平にする。すべてをゼロに戻す。自分で自分を不自由に縛り付けている思い込みからの解放!

欲そのものよりも、欲に無意識に反応する思考プログラムをリセットすることでも、余計な「思考君の空回り」を止めていくことができ、よりいい気分でいやすくなるのでした。

最後に―― 感じているとき……ヨガのポーズ中の呼吸や姿勢、動きに合わせて伸び縮みする筋肉、内臓の動き、血液の流れを感じているときに限らず、光を、音を、香りを、味を、刺激を、気分のよさを、気持ちのよさを……気分の悪さや痛みであっても……

感じている……

そのとき思考君は静まります。
考える代わりに、感じること。

Don't think Feel !!

最後に(^_^)

人はなぜ存在し、生きているんだろう? 宇宙が存在するとはどういうことなんだろう? それが私に、いやいや、私の思考君にとって大きな問題でした(今でも)。が……「考えたところで答えが出るはずのないこと」ということには子供の頃から気付いていました。
やがて私の思考君は、考えてもわからないのだから、人生を、そして今を楽しむしかない! そんな方向にシフトしていました。

それから何年かの時が流れ、偶然にも家にあった、いやいや、必然として家にあった合氣道の本を手にし、読んでみたのです。それまで本というものを読むことなどめったになかったのですが、子供の頃から武道が大好きな私の思考君は、読んでみるになったのです。
物質的で科学的なものしか信じなかった私の思考君は、氣というものについて書かれているその本の内容が、本当だったらスンゴイゾ〜と思い、早速それを体験できる道場へ行ってみることにしたのでした。
そして実際に、先生から伝わる抵抗できない不思議な力を目の当たりにし、衝撃を受けたのでした。

そしてそこでの合氣道の練習として、呼吸法や意識の用い方を重点的に行う中で、何でこんな練習をするのだろう? とこれまた私の思考君に疑問が湧き、呼吸法の本から瞑想法の本を読んでいくようになったのです。
そこには、「宇宙意識と一つになる」というようなことが書かれており、むむむっ! 人は瞑想を通して自分や宇宙が存在する理由を知ることができるのか!? 「悟り」ってのは実際にあるものなのか! 合氣道で修行の眼目は、「心身を統一し、天地と一体となる事である」というのは、決して言葉遊びではなかったのか!
ということなどを頭で知っていき、人生に対する大きなシフトチェンジを迎えたのでした。

そうこうして呼吸法や瞑想法の本だけでなく、武道・武術・食・身体・ヨガ・精神世界・宇宙・量子力学・哲学・仏教・道教……などの本を読むようになりました。
読みたいときに読みたい本を読むことが、必要なときに必要なことを教えてくれた気がします。
そうして悟るにはどういったことをする必要があるのか? ヨガにどう取り組めばいいのか? と、ヨガの本質を頭で理解していったのです。

この本を書き終え、本棚に並んだ本の中身にパッと目を通してみると、こんな本を読んできたのかと思いました。そのときには理解できていなかったのでしょう。
しかしそんなあまり覚えていない内容も、頭のどこかでしっかりと育っていき、今に至るのではというように思います。これからも読み返す度に新たな理解があることでしょう。

気付けば、今はヨガの指導をする立場にいるわけですが、まだまだ経験も浅く実践もともなっていない私が、このような本を書けたのは、これまでに出会った多くの人たち、これまでに読んできた多くの先達が記してくれた著書、私の身体君と合理的な思考君も(^_^)
そしてそれはすべての人や物事のつながりのお陰なのだな〜ありがたいな〜としみじみと思ったりしています。

この「最後に(^_^)」を私事で締めくくらせていただき大変恐縮ではありますが、今回本を出した記念ということでお許しいただきたく思います。
最後に読者の皆様に厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございましたm( _ _ )m

ということで筆をおかせていだだきます。合掌 !!

2009年11月14日    尾山 広平


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